【イベントレポート】Tech Development Meetup #1「ブロックチェーン領域に異業種転職したエンジニアたちの近況報告会」
株式会社Ginco

概要
2030年にIT人材は79万人不足すると言われている現在、エンジニアの重要性は今後も拡大傾向が続くと考えられています。そのような中で、弊社Gincoが発起人となり、株式会社コインチェック エンジニアの山崎浩毅 様、株式会社Gaudiy様よりエンジニアの土井湧太郎 様をお招きし、弊社Gincoからはエンジニアの遠藤駿也・CTOの森下真敬が登壇し、これからの時代、全てのITエンジニアが技術力・知見・キャリア形成につながる有益な情報を得られ場を提供できればと考えております。
このイベントレポートでは、11/16日に行われました第一回Tech Development Meetup「ブロックチェーン領域に異業種転職したエンジニア達の近況報告回」の様子をコンパクトにまとめてお送り致します。
エンジニアトーク
司会: 本日はお集まり頂き、誠にありがとうございます。コロナによってオフラインで直接エンジニア同士が交流を取ることが難しくなった、現在、エンジニア同士が繋がり、情報交換・相互交流できる場が減ってしまいました。また、IT・Webの発展によって、エンジニアが常に不足している状況にあります。
Web3業界のエンジニアは特に希少で、経験者・興味がある未経験者、共に不足している状況にあります。今回は、そういった興味があるけどWeb3業界ってわからないし...というエンジニア、またはエンジニア経験はないけど興味はある、という方々に向けて、Web3企業各社のエンジニアの方々にご登壇いただき、業界の実情・雰囲気を発信して行ければと思っています。
今回は、各企業順番に、事業内容・雰囲気・なんでWeb3に関わろうと思ったのか、などをお話していきたいと思います。まずは、株式会社Coincheck 山崎浩毅さん、よろしくお願いします。
株式会社 Coincheck様 発表パート
山崎氏:本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。株式会社コインチェックの山崎と申します。早速ですが弊社をご存じの方ってどれぐらいいらっしゃいますか?半数程度の方がご存じのようで恐縮です。
弊社は、暗号資産の取引所・NFTの取引所・最近ではメタバースに関連するオアシスという事業も行っています。ただ、メインは暗号資産の取引所になります。ご存じの方も多いかと思いますが、日本では暗号資産の取引は金融庁に認められた取引所しかできない仕組みになっています。弊社は交換業者として許可を受けて暗号通貨取引所を運営しております。
山崎氏: 次に開発体制についてお話したいと思います。エンジニアの方が半数との事ですので、さわりだけになりますが、お伝えできれば幸いです。私は、複数ある部署の中でアプリケーションの部門に所属しております。私は元々モバイルエンジニアをしており、当初はIOSエンジニア部門でアプリのデザイン等を行っていました。
そこから社内留学制度を用いて、ブロックチェーン開発部門に移動を行いました。なぜこのような制度があるかというと、エンジニアとして一つの分野にずっと所属してしまうと知識が偏ってしまったり、新たなスキルを獲得する機会というのが失われてしまいます。それを解決するための制度がこの社内留学制度です。
そのような背景で、ウォレット開発のアプリケーション開発グループで現在は働いています。これはフロントエンドのアプリではなく、ウォレット間のシステム連携など社内アプリケーションなので、未経験の分野で私にとっては大きな挑戦でした。
今は主に入手金システムについて関する分野の開発を行っています。概要だけ説明すると、入金アドレスから残高を取得するシステム、出金リクエストを作成し自社ウォレットで署名する、ブロードキャストを行う...等々の取引内部のシステムの開発を行っています。
このシステムは当然ながらブロックチェーンを使っており、そう言った経験がなくとても苦労しました。また、使用するブロックチェーン事に仕様が異なるので、ブロックチェーン毎に対応が必要でそういったところは大変なのですが、好奇心のくすぐられる面白い点だと思います。こういう新しいことに日々挑めることに興味関心がある人はブロックチェーンエンジニアに向いていると思います。直近ではPolkadotに対応したのですが、詳しくはテックブログに書いてますので、ぜひご興味のある方はご一読ください。
(https://tech.coincheck.blog/entry/2022/09/21/114631)
山崎氏: 次に金融機関としてのコインチェックについて説明します。冒頭でご説明した通り、暗号資産取引には金融庁による許可が必要で、弊社は資金決済法の統制下にある第一種登録業者のため、エンジニアも法令要件に従事しています。そのため、トラベルルールの規制対応・日々のリコンサイル業務などを代表に日々の業務を行っています。
最後にまとめとして、仮想通貨取引所で働くことの面白さを紹介して終わろうと思います。取引所は分散的な仕組みと中央集権的な仕組みを繋ぐ結節点と言えます。Web3の世界をユーザーのみなさんが安心して利用したり、分かりやすいUXを提供したりすることでイノベーションを社会実装していく事ができて、現実とデジタル空間の両方の世界を繋ぐからダイナミックで面白いと感じています。
山崎氏: ご静聴ありがとうございました。弊社は積極的に採用を強化しておりますので、是非ご興味ご関心ある方は、ご一報くださいませ。
株式会社Gaudiy様 発表パート
土井氏: こんにちは、株式会社Gaudiyの土井湧太郎です。よろしくお願いします。今回は、「ブロックチェーンを学び始めてからの振り返り」という内容で、私個人にフォーカスした内容でお送りしていきたいと思います。
構成としましては、1.苦労したポイント・2.どう学んでいったか?・03.どう向き合っていくか?の3点でお話して行ければと思っています。それではよろしくお願いいたします。
まずは、苦労したポイントなのですが、まだまだ出来たばかりの分野で、最初の一歩が踏み出し辛いという印象があります。また、世の中に浸透しているような概念が少なく、プロダクトのイメージが当初はつき辛かったです。
そもそも、どんなことができるのか想像しづらいし、聞きなれない単語が多すぎて、リサーチしようにもどこから取り組むか考えるのが難しかった。
じゃあ、どう学んでいったかというと「オライリーの実践スマートコントラクト開発」の書籍を購入しまして、まず作ってみてそこから考えよう!と思いました。その結果として、完全に理解した()と思いまして(笑)、そういったところから私はブロックチェーンエンジニアの道に入りました。
土井氏: リサーチについては、弊社のTech
Blog(https://techblog.gaudiy.com/)もおススメですが、他にも「HashHub Research」や「Twitter」のインフルエンサーもブロックチェーン関連の調査をするには良いのかなと思っています。
リサーチしたあとは、何か一つに対して深ぼってみるというのが、重要だと思います。なんでも良いので、「プロダクションレベルで使うにはどうしたら良いのか」ということを考えて、調査・開発を行っていました。
例えば私がやった範囲だと、「OpenSeaなどのDAppsのコードを読んでみる・動かしてみる」とか、「Upgradeable Contractについて調べてみる」、「SBT,PBTの仕組みについて調べてみる」といった事を行っていました。最新の議論もGithubみればキャッチアップできるし、SBT,PBTのSolidityもそんなに難しいコードを書いているわけではない。
この世界はOSSで出ているコードが実際のプロダクトとして動いていて、自分で検証したりできる。最初の一歩が踏み出しづらいだけで、学習コストはWeb2の勉強とそこまで大差ないと思います。学びやすいし、楽しい。
ただ、なんでもかんでもWeb3の技術を使えば良いという訳ではなく、単なるインセンティブやユーティリティの大部分はWeb2で実現可能です。Web3の面白さはデジタルアセットに色んなステークホルダーが自由に価値をつけていることだと思います。
Web3じゃないと出来ないような、ユーティリティに注目した機能を実装していく事が重要で、Web3の面白い点ではないかなと思います。
土井氏: 最後に、「どうWeb3と向き合っていくか」についてお話したいと思います。
まだまだ、マスアダプションするためには改善が必要だと思います。一般にはわかりづらい世界だし、大衆に届けるには、”体験”の改善が必要だと思います。その為には先ほど申しましたユーティリティの分野を改善していき、Web3にどんな価値があって、何が楽しいのか、ということをユーザーに積極的に訴求していく必要があると思います。
また、ユーザーにはUI/UXを改善する事で、Web3の複雑な部分を意識せずにWeb3の世界に入ってもらうことが理想だと思っています。そのためには、Web2で培ってきた技術をベースにUI/UXを高めていく事が重要だと思っています。
ご清聴ありがとうございました。弊社も積極的に求人募集を行っておりますので、何卒宜しくお願い致します。
株式会社Ginco 発表パート
遠藤氏: 本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。弊社Gincoからはエンジニアの遠藤が発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
発表を通じて私が皆様にお伝えしたいのは、「想像していたよりも敷居が高くなかった」ということです。先ほど、土井さんもおっしゃっていたかと思いますが、最初の第一歩は踏み出しづらいですが、一歩踏み出せば想像していたよりも、敷居が高いという訳ではありませんでした。そういった自身の経験談を本日はお話できればと思います。
まずは、自己紹介から始めさせていただきます。改めまして、株式会社Gincoでエンジニアをしております遠藤駿也と申します。元々、スマホアプリ開発とWebフロントエンドのエンジニアをしていて、ブロックチェーン領域は未経験でした。そのような中で、どんな経緯を経てGincoに転職したのか、経緯から説明したいと思います。
転職の経緯の一つ目は、自分だけの優位性・尖ったエンジニアになりたい、と思ったからです。転職以前から気になった技術があればとりあえず触ってみるという好奇心旺盛なタイプでした。また、色々なジャンルの著名なエンジニアと自分を見比べて、焦燥感を感じていました。
その焦りから、義務的な勉強・形だけのアウトプットをしてしまって、広く浅く経験を身に付けてしまっていました。その中で、自分だけが知っているような尖ったエンジニアになりたいと思いました。言い換えれば、ゼネラリストからプロフェッショナルになりたかった、ということです。
そう思いながらも、行動できない日々の中、一件のDMが来ました。それが、「ブロックチェーンとか暗号資産興味ないですか?」という内容でした。字面だけみると、すごい怪しい内容ですが(笑)、内容はそういうことではなく、エンジニアを募集しているということでした。
正直に言って、ブロックチェーンエンジニアというのは、当時頭の片隅にもなかったのですが、元来の得体の知れないものへの好奇心と、ブロックチェーン毎に思想の違いとか、イケてる言語仕様のものとかもあり、先ほど言った尖ったエンジニアになれそうだなと思い転職を決意しました。
もちろん、未経験なことへの不安もありましたが、未経験でも活躍している方がいらっしゃるという事、プロフェッショナルが身近にいることで、入社してからは不安はなくなりました。ただ、新しい事への挑戦に不安はつき物ですので、これを乗り越えなくして挑戦はなし得ないな、という思いもあり、私はブロックチェーンエンジニアの道への第一歩を踏み出せました。
ここからは、実際に転職してからのGincoでの業務内容についてお話していきます。入社から一年に満たないですが、既に二通貨ほど新規通貨対応を実施しました。Gincoではマイクロサービスごとに対応を任せられるので、当事者意識を持って業務に取り組めるのが、とてもやりがいがあって良いと思います。
遠藤氏: 他にも、ウォレットプロダクトを開発していて、そこにもすごいやりがいを感じます。企業の大事なお金を預かるモノなので、責任は重大ですがその分やりがいを感じます。
もう少し通貨対応についてお話させて頂くと、通貨対応とは、新しいブロックチェーンに対応し既存のウォレットにインテグレーションすることを言います。プロトコルのR&Dを通じてアドレスの生成方法やコンセンサスアルゴリズム、マルチシグの対応方法を調査して、マイクロサービスごとにエンジニアに業務が振り分けられます。それによって、1つの通貨に注力できるので、オーナーシップをもって業務にあたることができます。
最後になりますが、転職以前は気になった技術があればとりあえず触って、焦燥感から色々なことに手を出すというゼネラリスト的でしたが、転職してから約一年弱で、ブラックボックス化されている部分を見に行くようになりましたし、オーナーシップが培われたと思います。あとは、ブロックチェーンオタクといえるような人間になりたいと思います。これで、私の発表を終わります。弊社も積極採用を行っておりますので、ぜひよろしくお願いします。
Q&A
ここからは、弊社GincoのCTO森下真敬を交えてQ&Aセッションを行いました。
Q:エンジニアを目指すうえでおすすめのロードマップはなんでしょうか?
遠藤氏: 思想的にも技術的にも軸足がしっかりしているビットコインとイーサリアムから始めるのが良いと思います。Mastering
Bitcoin Mastering Ethereumの二冊がおすすめ。
土井氏: 書籍から入って手を動かすのが良いと思います。遠藤さんに挙げていただいたMastering Ethereumはとても良い本でした。
山崎氏: ビットコインとイーサリアムに影響を受けていないプロトコルは存在しない。なので、この二つから学び始めるのが一番だと思います。あとはちゃんとした会社で仕事としてやるのが一番だと思います。
森下氏: 私も同感で、仕事としてブロックチェーンに触れるのが一番良いと思います。
Q:海外と比べて日本国内でのブロックチェーンエンジニアの地位・収入についてどう思いますか?
山崎氏: ここ数年で認められて向上してきたと感じます。直近半年ぐらいは落ち込みに不安を感じると思いますが、先行者利益をとって損になる技術ではないように感じます。
土井氏: 正直どれだけの地位かというのは比較しないとわからないですが、GAFAのエンジニアも海外ではブロックチェーン業界に転職しているということは良く聞きます。でも、まだまだ先行きは不透明で難しい所ではあるが、先行者利益を取れればと思っている。
遠藤氏: 先行者利益をとれるかどうかは分からないけど、自分からするとその先行き不透明さも含めて面白いと思っています。エンジニアとして先進的なことに取り組めているという感覚はあるし、地位が低いと感じたことは無いです。収入は、まああればあるだけいいですね(笑)
森下氏: 国内第一線で活躍しているエンジニアは軒並み年収が高くなっています。なので、地位が低いという事は無いと思う。これからはもっと上がっていくと思っています。
Q:なぜ今の会社に?
山崎氏: CoincheckはGincoさんやGaudiyさんと比べてクリプト寄りの技術を使う機会が少ないと思います。例えば、スマートコントラクトを扱うことなどはあまりありません。だけど、両方触れるというのはおいしい所かなと思います。
土井氏: 自分はブロックチェーンじゃなくて、Gaudiyの面白さに惹かれて入りました。代表の考える、コンテンツを活かした戦略は日本に合っていると思うし、そういった代表のビジョンに共感を覚えて入社しました。
遠藤氏: 先ほど申し上げた、DMからのリファラルがきっかけです。入社前にGincoのブログをみていたので、専門家として有名な人が多く、そういう点も安心できるなと思い、入社を決めました。
Q:ホワイトペーパーを楽してサマリーだけ理解する方法はありますか?
遠藤氏: ブログとかでまとめられているのを見るのが楽ですが、でもちゃんと読んだ方が理解できます(笑)
森下氏: エンジニアならソースを読むのが一番わかると思います。
Q:ブロックチェーンエンジニアとして参考にしたWEBサイトは?
土井氏: Openzeppelinがすごい参考になりました。
Q:Web3領域特有の楽しさは?
土井氏: アハ体験の連続かな(笑)分からない事ばかりで、それがわかるようになるのが楽しい。
森下氏: 頭の良いアタッカーがいるのでそこの対策を考えるのが楽しい。
遠藤氏: これ学んでるの日本で俺だけ?って感じ(笑)
Q:好きなプロトコルは?
山崎氏: 直近関わったPolkadot。
土井氏: 直近関わったPolygon。
遠藤氏: 一番最初に関わったFlow。
まとめ
今回は各社の第一線で実働しておりますエンジニアのお三方をお招きし、Tech Development Meetupと題しまして、ブロックチェーン未経験からどのようにブロックチェーン業界に飛び込んだのか、ご自身の経験と共にお話いただきました。
お三方に共通していたのは、ブロックチェーン業界に飛び込むための第一歩が難しい!という点でした。何事も挑戦を始めるのは、不安が付きまとうものですが、ブロックチェーンのようなまだまだ、一般に知られていない技術の世界に飛び込む、というのは尚更難しく、不安だと思います。
ただ、不安を乗り越えた先のWeb3の技術は想像よりも敷居が高いモノではなかった、というのは、共通していました。
このレポートを読まれた皆様もWeb3、ブロックチェーンに興味関心がございましたら、是非Web3業界に一歩踏み入れてみませんか?その際には、弊社株式会社Gincoにぜひご一報をください。
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